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『おやすみプンプン』――具合の悪いときに読む漫画(前編)(綿津見 洋)

 みなさんお元気ですか? 俺は病気でした。

 いや、正確には病気でもなかったんですが、まぁー、調子は最悪でした。ベンゾチアゾピンという系統の薬があって、長い間そういう薬を飲んでいたんですが、調子が良くなったのでそれを飲むのをやめたんですね。いやぁ、そうなると禁断症状、専門用語で言うところの離脱症状というやつになりまして、ほんっとぉ~に大変でした。死ぬかと思った。それが2月中ごろの話で、現在は元気になりましたが。

参考外部リンク:wikipediaベンゾジアゼピン離脱症候群
アヘンより危険な離脱症状とか書いてあるが。

 しかし、許せないのは処方した医者の態度。調子が良いのでやめてみます、って前回の診察のときに話したのに、それを完全に忘れちゃってるし。それで、すげー調子が悪いんだけど、これ離脱症状じゃないのんか、と聞いたら、その場になってようやく薬のガイドブックみたいな本をめくりだす始末。ぶっとばしてやろうかと思った。「いや、離脱症状はでない」とか強弁してたけど、ちょっとネットで調べれば、山ほど離脱症状についてのページが出てくるんですが。いや、ネットで調べれば出てくることが全て真実とは思いませんけども。
 四ヶ月も服用すれば薬効はなくなるし、離脱症状について苦しんでる人がいっぱいいるらしいのに。その薬を長い間処方し続けて、挙句こんなぞんざいに扱うとはびっくりですよ。

 で、リンク先のページにもありましたが、この離脱症状って、不安感やら自殺願望やら憂鬱やら倦怠感やら、そういうものに一気に襲われるんです。つまり、一気に激烈な鬱状態になるわけですね。まさにおはよう倦怠感ですよ。

 ベッドの上でもだえながらも、賢い俺はピンときました。
「今こそ長い間読まずに、買ってない単行本がたまってるあの漫画を読もう」、と。
その漫画こそが今回の記事の『おやすみプンプン』(浅野いにお 小学館)。

おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)
(2007/08/03)
浅野 いにお

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 この漫画、激烈にダウナーな状態で読むとシンクロ率が上がるんじゃないかと。
 ……シンクロ率上がり過ぎて死ぬかと思いましたよ。


 小学生のプンプンに襲い掛かるありふれた、それでいて圧倒的な不幸。そこで泥沼のようにネガティブな感情にはまり込んでいくプンプンの可哀想なこと。いくらもがいても分かり合えない人と人。この世に救いはないのか!

 と、最初の頃は凄い迫力を感じて、引き込まれたんですが、連載を追ってるうちにちょっと読む気が減ってしまって、しばらくほったらかしにしてたんですね。

 プンプンが高校を卒業してからのストーリー展開っていうのが、なんだか見ていられなくって。特に、南条幸(なんじょう さち)さんと出会ってからが、なーんか、ね。
南条幸
南条幸↑

 南条さんと漫画を共同制作するくだりなんか、青臭さに耐えられなくなってしまって。俯きがちな頼りない若造が、女の子と出会って、励まされながらクリエーターを目指すって。それって自意識持て余した若者の典型じゃないですか。漫画を持ち込みして手応えが悪かった帰り道、「…さっちゃんは天才だから大丈夫。」なんてプンプンが南条さんを励ますとこなんか、傷の舐め合い全開っつうか、もう痛々しくて見てらんない。
 小学生編では、プンプンの自由意志とは関係なく、いやおうなしに不幸に絡め取られていく様子が圧倒的な筆力で描かれていたように思うんですよ。周囲の大人たちの身勝手さに振り回されている感じというか。
 ところが、プンプンが高校を卒業してからは、「いや、そりゃ自分の不幸に酔ってるから抜け出せないんじゃないかい?」ってなもんで。
 しかし、それは作者の浅野いにお本人も自覚した上で、あえて徹底的に描いているんでしょう。出版社に漫画を持ち込みに行く話は単行本9巻の冒頭ですが、ここで南条さんとプンプンに対して編集者が投げかける厳しい指摘って、そのまま浅野いにおの漫画に当てはまる批判なんですよね。「サブカル風味」だの「不幸自慢」だの。
 となると、やはり浅野いにおは徹底的に自分にとっても痛い部分を自らえぐりに行っているんでしょう。表現技術の巧みさも素晴らしいクオリティーですしね。だからこそ迫力があって、こっちも「読んでらんない」となるわけです。
『ベルセルク』の蝕のシーンを何度も読み返す気にならないのと一緒です。……いや、やっぱ全然違いますね。向いてる方向が違いすぎる。

ベルセルク (13) (Jets comics (647))ベルセルク (13) (Jets comics (647))
(1997/03)
三浦 建太郎

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 で、再開した連載の方では、プンプンが運命の人と信じていた愛子ちゃんが再登場して、急展開。そのストーリー展開を見て「やっぱプンプンは凄い漫画やで!」ってなってるところに、激烈な鬱状態に襲われて。こりゃ、今単行本を一気読みしなくていつ読むんだ、となったわけです。

 一気読みして初めて気付いた伏線がありました。なんとなくビッグコミックスピリッツを立ち読みしてる時には気付かなかったんですが。「こ、これは凄いことに気づいたぞ!」と思って、ネットで「他の読者は気付いているのかな?」と調べてみたら、当然みなさん気付いてました。がっかりですよ、どうやら俺が鈍感なだけだったらしいです。
(以下、これからプンプンを読み始める人のために白抜きの文字にしときます。マウスでなぞると文字が浮かび上がります。↓)
 南条さんとプンプンの初めての出会いは、第6巻62話~63話。展覧会でプンプンが南条さんの描いた天の川の絵を見て感動するシーン。と、本人たちは思っているけど、本当はそれより前に二人は出会っているんですね。
 第8巻83話で、南条さんと部屋探しをするシーンでそれが分かります。南条さんは額から血を流しながら、額に古傷があって開きやすくなっている、ということを言います。そして、南条さんの持ち歩いてるスケッチブック。
 これ、第2巻13話で廃工場にいた女子生徒と特徴が同じなんですね。つまり、南条さんとプンプンが初めて出会ったのはこの廃工場の場面。その女子生徒は、頭から血を流しながら、その理由を「父親が乱暴者だから」と語り、ここは自分にとって特別な場所だと言います。そしてそのニアミスのあと、プンプンは帰り道で天の川を見て、その景色を心に刻み込みます。
 で、高校生になったプンプンは南条さんが描いた天の川の絵を見て涙ぐむわけですが。南条さんがプンプンを感動させる絵を描けたのは必然なんですね。だって二人は実は同じ景色を見てたんだから。


 と、いうわけで。
 現在プンプンは愛子ちゃんと南条さんの間で揺れ動いてますが。
 みんなは最終的にプンプンがどっちとくっつくと思うー?(井戸端モード)
次回に続く。次回更新は3月18日)
(文責 綿津見洋)
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アイスココアを氷ぬきで飲むのが好きな人たちのブログです。このブログは数人で記事を担当し運営しています。
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とかげ:泳ぐほうのとかげである。それはきっと海イグアナである。波にも乗る、潜るだけではないイグアナである。陸では珈琲を愛飲するイグアナでもある。でもとかげである。

ミドリの人:誰がどう見てもミドリ。しかしそれは仮の姿。正体はベビーピンクである。たまに発光する様な気もする。

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綿津見 洋: アフリカ産の豆科の大木。やや赤みがかり、木目は緻密で美しい。
 その拳は天を突き、その蹴りは大地を割ったという。

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